小橋寛子さん(現エコツミさん) 2005年9月・インタビュー
―来月で小橋さんと中村さんのコンビも一周年を迎えますね。

小橋・中村:ありがとうございます。

―お二人が組んでからジャパネスクポップ、物語り歌に加えてポップスと、世界が広がってきましたね。

小橋:そうですね、お客さんが増えたことが一番うれしいです。(笑) 意外な人が意外なジャンルを好きになってくれまして、例えばノリノリなのが好きな人が物語り歌に感動してくれると、歌ってよかったな、と。

―広げようと思った心境などありますか?

中村:作りたくなってきて......(笑)

小橋:おもむくままに。(笑) でも多少意識はしてますね。次の物語り歌どうする?と。歌詞に関してはたくさん作り貯めるタイプなので、いっぱい作ってその時の気分で次はこれ、と選ぶくらいかな。だから陽の目を見てないのがいっぱいあるんです。

―どれくらいあるんですか?

小橋:トータルで110曲くらいあって、その中でも曲になってるのが美穂のとか山田のとか合わせて50曲くらい。だから半分くらい眠ってます。多分一生陽の目を見ないのとかある。いちごのやつとか。(笑)

中村:(笑)

―それはどんな曲ですか?

小橋:いちごミルクみたいな......恥ずかしくて言えない。(笑) 20歳くらいの時の歌詞かな。

中村:「lost souls」も昔のだっけ?

小橋:1年以上前に作ったんですけど、その時悲しい出来事があって。大切な人が失踪してしまったんです。最初は悲しくて泣いてばかりだったのに、だんだん泣かない日も出てきたりとか、心の中で「あの時は楽しかったな」と美化されていくのが嫌で書いた曲。

―歌詞に「無くなっていく」とありますね。

小橋:そう、無くなっていっちゃう。その人がいたときの温もりとか、ドキドキしたことが。居なくなって時間が経ってくると、あの時ドキドキしたなぁ、という思い出になってきてしまって、居なくなって辛かったのが、「居なくなったんだなぁ」と痛みが鈍ってくるのに耐えられなくて書きました。

―中学、高校などの卒業の別れもありますが。

小橋:それはあらかじめ決まっているから、そういうものだという気持ちになるじゃないですか。卒業式でも泣いたりするけど、同窓会とかあるし。その人はいきなり存在自体が無くなったんです......思い出にしたくなくて書いたけど、今となっては思い出になっちゃった。(苦笑)

―でも今歌うことで思いもつながっていくわけですね。

小橋:うまくまとめましたね。(笑)

―最近の曲では「遠くにゆれる花」もよく歌ってらっしゃいますね。

小橋:「さくらの日」に代わる物語り歌を作ろうということで、曲先で作りました。何だろう...全く恋愛の対象にならない男友達。周りは付き合ってるんじゃないかという言うくらい仲が良くて、でもお互い全くその気は無い、みたいな。そんな人への気持ちを込めました。

―それは共感できる部分があります。(笑)

―前回のインタビューから約半年が経ちましたが、それまでの活動について振り返りたいと思います。まずは3月の音楽芝居、ご成功おめでとうございます。

小橋:ありがとうございます。

―1年ぶりに上演されていかがでしたか?

小橋:だいぶ内容が整理されて、前回よりもやりやすかったですね。前回はやるということ自体でバタバタしてたけれど、今回はもっと内容に目を向けられたかなと思います。

―ブログの中で、小橋寛子を最もよく表現できる場所だと書かれていましたが。

小橋:書きましたっけ?(笑) でも確かにそうだと思います。MCが苦手でバカトークしかできないので(爆笑)やりたいことが一番よく表現できる場所です。例えばライブの最初に「祈り」をやったらダメじゃないですか。

―ちょっと反応が恐いですね。

小橋:お客さんが暗くなってしまいますよね。でも音楽芝居は流れの中でいろいろ表現できるから、感情の流れがもっとなだらかに動いてゆくと思うんです。やりたいことが伝わるというか・・・。 たくさんの曲をライブでやる時、それをつなぐにはMCなり何なりが無くちゃいけなくて、私の曲自体がノリノリじゃないからその時にちょっと不安になる。だってみんな動かないんだもん(笑)下斜め45度みたいになってるから、あれ、聞いてるのかな、と恐くなって、MCでバカなことを言って笑ってくれたりすると、「あ、ウケた」ってちょっと安心しています。(笑)音楽芝居はそういうことを考えなくていいですよね。純粋に作品だけ考えていられる。答えになってるか分かりませんが。(笑)

―いえいえ。そして最近では、「〜の日」と題したライブが続いてますが、始めたきっかけは何なんですか?

小橋:(四谷天窓)コンフォートですね。H田さんという素敵なPAさんがいるのですが、その人が次のライブは6月29日ですね、という時に「あ〜、ニクの日ですね。」って言ったのにびっくりして。どんなオヤジギャグだよって思ったんですよ。

中村:(笑)

小橋:だけど、意外に面白くて。それで活用したところ、だんだんエスカレートして。ニクの日はチラシの裏に「肉」って書いただけだったんですけど、次がナクの日で、感動させるライブにしようと。結局MC入れちゃったけど(笑)次がハナの日で花を置いたり、曲も花をモチーフにしたものをメインにしたりとか、ハニワの日は勢いで恐い話かな、と。

―確かに不気味さもありますからね。

小橋:10月16日にも(渋谷)アピアでライブがあるんですけど、それは「人生色々」って......(笑) 例えば家賃が3万円以下の人とか、妻の写真と愛人の写真を持って来てくれたりとか、人生色々だよ、というのを証明できるものを持ってきてくれたら、その中でベスト・オブ・人生色々の方はご招待にしようと。(笑) 当日までにオレ苦労してるよ、みたいな証明書をあらかじめメールで送ってもらえたら、その中から選んで発表します!もしくはすごくいい人生色々がたくさんいたら、複数名ご招待。その場合ベスト・オブ・人生いろいろの方には賞品をあげようかと考えてます(笑)

―ブログを見逃せませんね。(笑)

―続いて、最近の代表曲についてのお話をうかがいたいと思います。まずは「梅雨」から。

小橋:「梅雨」も1年くらい前に詞をかいた曲ですね。第一回の「舞姫」が終わった頃に書いた曲だと思います。あの時は美穂が選んだんだっけ?(→中村さん)

中村:うん。

小橋:美穂と山田と3人で話してるうちに、じゃあ次はこれをやろうか、ということで。

―「空の星は海から昇ったんだろう」、「空をすくっても透明だね」など、詩的な表現が目立ちますね。

小橋:私の中では直前に「ピアノ」を書いていたんですけれど、「ピアノ」は結構自分の思うがままに書いて、分かられなくてもいいや、みたいなところがあったんです。それを今度は誰でも分かるような表現の中に、どれだけ自分らしさを出すかと考えて書きました。詞自体は伊豆に行った時。海がばーっと広がっていて、それを見ていた時に原案がうかんだんです。空と海の境目が触れているというか、むしろ混ざっているようで。でも、本当は触りたいのに触れない、みたいな感じ。何か永遠に届かない恋だな、という気がして書きました。

中村:曲のサビは歌詞を読んですぐに出来たんです。何でかって言われても分からないですけど。(笑)

小橋:スタジオで3人で作ってる時に、(中村さんが)Cメロが出来ないということで、私は部屋をおいだされました・・・

中村:サビが最初に出来て、AメロとBメロを作ってもらって、最後に何とかCメロを(笑)......

―続いて、「祈り」に行きたいと思います。

小橋:「祈り」は曲が先で。

中村:あれ? 同時進行で......

小橋:違うよ。前のインタビューの時に......

―(乱入) 事情を知らない方のために解説いたしますと、詞先で作るはずだったところ、先に中村さんがサビのメロディを作っていたそうです。

中村:でもこういう歌詞を書いてって頼んでまして。

―イメージが出来ていたので大丈夫だったわけですか。

小橋:大丈夫だったけど、びっくりした。あ、曲作ってる...と。(笑) でも結局ほとんど曲先だよね。ある程度原詞かいて、ここワンブロック削って、ここ増やして、と作りました。

―そして歌詞の方は、「ぼくはまた人間になれない」など、暗さが目立ちます。

小橋:そうですね。あれは別に妖怪人間ベムの話じゃなくて、(笑)(注:小橋さんの大好きなアニメのひとつだそうです。小橋さんのブログにも時々その単語が......)生きてゆくには生きる意味は必要なのか、と。多分生きる意味がもう分かってる人と、まだこれといって分からない人がいると思うんです。でも、何となく世の中の風潮では生きる意味を持たなきゃいけない、ような。けれど、別にそんなものが無くても動物は生きてるわけで。じゃあ人間だから考えなきゃいけないのかと。もちろん考えることは大事だと思うんですけど、それが無かったら自分の存在価値を否定されるのかというと、そんなことは無いと思うんです。生き方が決まった人間ってある意味楽だと思うけど、まだ悩んでいる間でも自分自身を否定されることは無いと思う。例えそのことで「人間」だと言われなかったとしても、それでもやっぱり生きていこうと。

中村:何も出来ないけど、祈ることは出来るんだよ、ということを書いた曲です。

―続いて、「さくらの日」は卒業をテーマにした曲ですね。

小橋:そうです。まさに卒業式当日をイメージして作りました。うちの高校は毎年卒業生が歌う歌があったんですけれど、いわゆる卒業卒業した歌じゃなくて、クラシック系の歌なんですよ。それを歌ってみんなが泣いちゃったりするんですが、その曲を歌っているのを思い出して作りました。その時ソロパートを歌った8人ぐらいで手をつないで歌ったんですが......あれ、8人だっけ?どうしよう。もしこれで違ったら。(笑)

中村:妄想だ。(笑) この曲は初めのメロディが先に出来ていて、それから卒業というテーマに決まって作ったんですが、「全部全部〜」で(曲調が)変わる所は自分の中で結構ベストメロディで、涙を誘うように作りました。アレンジには意外と時間がかかったんだけど、よく仕上がりました。

小橋:華やかだよね。中高の友達が聞きに来てくれたりとか、ファンの多い曲です。

―続いて、「ビー玉」についてうかがいます。

小橋:この曲は失恋した時に書いた曲です。自分の思い自体は純粋だと思っていても、別れて悲しい時に誰かに言ったり泣いたりした時喋れば喋るほど汚れていっちゃう気がして「あ、想いはビー玉みたいだな。」と思ったんです。見ていれば綺麗なんだけど、いじればいじるほど指紋や手垢がついてきちゃう・・・。ちょっと違うんですが、鬼の中には言霊を食べる餓鬼がいるんです。だから喋れば喋るほど餓鬼に言霊を盗まれてしまう。そのために大事な言葉、所謂呪文なんかはむやみに言葉にしてはいけない。餓鬼が食べてしまって、威力が落ちてしまう、と言われていたりするんです。

―中村さんのジャパネスクポップは珍しいですね。

中村:作ってみようかなと思って。(笑) 多分サビとかはジャパネスクポップらしくないですけど(笑)AメロBメロは、日本の昔からある奥ゆかしさ、やさしさ、延いてはたおやかさをイメージして作りました。対照的に人を想う気持ちの強さをサビで表現したんです。

―9月7日のライブから、いよいよ「空の彼方は、ここにある」が始まります。モチーフは「銀河鉄道の夜」なんですね。

小橋:ひらめきました。(笑) letterさんのように(笑)毎回来てくださる方が増えてきて、初めての方も何回も来ている方も楽しんでもらえるようにしたいと思って考えたのが企画物なんです。ニクの日なりナクの日なりなんですけれど、今回の企画の一番最初のきっかけは、寺山修司さんの作品に「ノック」という市街劇がありまして、これは街全体を劇場と見立てて芝居をしたんです。この時間にここでこういう芝居がある、とポストにリアルな地図を入れたそうで、実際に包帯を巻いた男が民家をいきなり<ノック>したりと、とてもおもしろそうな作品だったのですが、先日、その地図をみる機会があったんです。前々から、街全体が楽しくなるような、何かおもしろいこと出来たらいいな思っていたんですが、キーボードが好きではないので、ピアノでやるにはやっぱりライブハウスだな、と。それで東京を見渡すようにしてみたら、銀河鉄道の旅、所謂夜空の旅なら素敵な感じになるんじゃないかと思いました。いつもやっている渋谷のアピアと、四谷のコンフォートを星座表と照らし合わせて、ここが白鳥座でここがわし座だ!ってうまくあてはまったので、次はこうすればいいんじゃないかと考えたり、まだまだ規模は小さいですが、自分でもすごく楽しいです。

―ライブを見る側もやる側も楽しめますね。

小橋:10月3日の最後の日だけ新橋でワンマンライブなので、役者の友達が登場したり、今までとはまた違うことをやりたいと思います。

―続いて、歌やピアノに対するこだわりなどについてお聞きしたいと思います。

中村:いろいろありますけど、まず、響きとか音色とか......バイオリンなんかは音を出すだけでも大変なんですけど、ピアノは叩けば誰でも音は出せる。でも、それは音であって、響きではないんです。いかに音をよい響き、よい音色にするか・・・。

小橋:私はやっぱり少しでも喜んで頂けるように、ということです。具体的には筋肉の使い方とか、舌の位置とか、音色とか。自分が作詞して歌っていることもあって、その分心が入りやすいわけですけれど、感情だけじゃダメだと思うんです。もちろん技術だけでもダメですが。ベストは体の中に技術を取り込んで、完璧に感情だけで歌えることかなぁ。いつかは無意識のレベルまで技術を叩き込んで、歌う時には頭の中から消していたいですよね。今全て消してしまうと感情面では満足感があるのですが、大体、音源聴くとひどかったりしますし。(苦笑) だから、感情的になりながらも理性的でいるということを大切にしてます。歌っていることだけで私は会場にいる誰よりも幸せなんですが、私が一番感動しちゃいけない、といつも言い聞かせています。

中村:オリジナル曲だから、曲ごとのメッセージを伝えるのが一番なんです。で、それを伝えるためにどうするかという話なんですけど、曲に酔っていかにも表現してますという風に弾く人もいるじゃないですか。でもあれは音源だけを聞いた時に、音はほとんど歌っていないというか......平坦だと思うんです。もちろんライブは目でも見てるから、歌でもピアノでも感情的に弾いたり歌ったりすると、見てる人も感動しやすかったり、入り込みやすかったりします。でも、一見そうなんですけど、でもやっぱりすごい所までは行かないと思う。だから、音で勝負というか、音だけで伝えるために、その曲のメッセージや想いを指先に伝えて、その音色や響きを作っているんです。それをどうやってるかまで喋る?(→小橋さん)

小橋:それはダメ。餓鬼に盗まれるから。(笑) でも視覚的にもうちのピアノは面白いと思う。こう、(中村さんは)直角に座ってるし。(笑)いや、本当酔って揺れる人も多いですけど、あれはシャーマン的なノリだなぁと思ってしまうんです。でも(中村さんの演奏を)見てると、一見淡々と弾いてるのが面白い。なんか水面下で足を動かしている白鳥っぽい。

中村:何それ?!

小橋:あはは。でもライブハウスのPAさんとかも「あの直角具合がいい。」とか言ってくれます。(笑)

―中村さんのピアノは、激しいアレンジも印象的ですね。

中村:他の楽器が増えて盛り上がるような激しい所をピアノ一本で表現してます。

小橋:ピアノだけで立体的な表現を作ってる。アーティストらしい表現にすると。(笑)

中村:バンドはこうテンポを刻むというか......あまりそういうメトロノームで刻めるのは好きじゃないんですよ。やっぱり音楽はメトロノーム通りにはならないはずなので。自分たちが弾いてるのをメトロノームに合わせたらずれるだろうし。でもそれが音楽が生きているってことだと思います。もちろん、バンドにはバンドの良さがあり、逆にドラマーは正確さが求められると思いますけど。バンドやったことないのでよくわかりませんが(笑)

―では最後に、今後のことについてお聞きしたいと思います。

小橋:強いメッセージを持ちながらも、やわらかい作品を作りたいと思います。詞に関しては、一つの言葉にたくさんの意味が凝縮されているようなものを作りたいです。

中村:そうですね。情景が浮かんだり、気持ちが高まるようなメロディーを作っていきたいです。

小橋:そして相変わらずもっともっとたくさんの方に聞いていただきたいと思います。

―次のCDの予定などはありますか?

小橋:CDは企画中です。「さくらの日」をメインにして、卒業式前に流行らせる予定です。(笑) それなので冬ぐらいに出したいと思います。

中村:曲は今ポップスが増えてきているので、このまま増やしたいと思います。

小橋:ジャパネスクポップは......

中村:たまに出てきます。(笑)

―本日はどうもありがとうございました。

小橋・中村:ありがとうございました。


(2005年9月某日、都内某所にて)


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